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WEPPの使い方は以下の4段階で整理します。
- 1.はじめに(WEPPの概要)
- 2. WEPPのインストール
- 3. 入力データ(Climate / Soil / Management / Topography)
- 4. 出力の見方(最低限)
WEPPとは何か(1分で)
WEPP(Water Erosion Prediction Project)は、 降雨と地形と土壌と営農管理の情報をもとに、 水による土壌侵食(water erosion)と流出(runoff)を計算するモデルです。
特徴は、USLEのような各種係数のかけ合わせによる経験式ではなく、 降雨 → 流出 → 侵食 → 輸送 → 堆積といった一連の過程を、入力条件に応じてシミュレーションできる点です。
まずは圃場スケール(hillslope)の操作を理解し、そこから流域スケールへ拡張します。
なぜ圃場スケールから始めるのか
- 入力が最もシンプルで、WEPPを使用する上で基礎的なパートであるため
- 結果を決める要因(気象・土壌・地形・営農管理)を理解できるようにするため
- 流域スケール(内部の水路モデルやGeoWEPP等)に進んでも「何が効いているか」を見失いにくくするため
個人的な所感としては、いきなり流域解析へ行くと、地形処理・パラメータ・出力の情報量が増え、 「どこで結果が決まったのか」が分からなくなりがちだと思います。
WEPPの入力(4本柱)
WEPPの挙動は、ほぼ次の4つで決まります。ここが解析の核心です。
Climate(気象)
- 雨がいつ・どれだけ降るかを決める(降雨強度、降雨継続時間、頻度など)
- 例えば実際の侵食イベントを再現するときには、観測した降雨のデータを使用できる
Soil(土壌)
- 土壌の物性について決める(削れやすさ・浸透しやすさ・構造など)
- 土による違いを調べたり、侵食対策を削れやすさのパラメータで表現したり、様々な用途がある
Topography(地形)
- 圃場内の地形を決める(斜面長・勾配・区間分割など)
- 勾配修正工の効果などのシミュレーションができる
Management(管理)
- 人間による要因を表現する(作物、耕うん、被覆、残渣の有無など)
- 主に営農的対策効果のシミュレーションで用いる
WEPPが見ている侵食過程(ざっくり)
- Interrill(インターリル)侵食:雨滴による、斜面での面状の剥離・輸送(畝などの斜面)
- Rill(リル)侵食:水の流れによる溝(リル)での線状の剥離・輸送(畝間を流れる水)
- Deposition(堆積):輸送能力が落ちた場所で堆積
WEPPが「侵食量」だけでなく、どの過程が支配的かを示せる点は意外と重要です。
WEPPの出力(何が分かるか)
- 水の流出量(runoff)
- 土の侵食量(soil loss/sediment yield):インターリル/リル/その合計 など
- 斜面内の侵食・堆積の分布(設定に依存)
- 期間合計・イベントごとの集計
初級編では「具体的な値を出す」よりも「挙動の方向が妥当か(侵食量が被覆で減る、急勾配ほど増える等)」を確認してみましょう。
初歩的な留意点
- WEPPの出力は“正解”ではなく、仮定に基づく予測
- 入力の不確実さ(特に土壌・管理)が結果に大きく反映されるので注意
- 「出力の数字」だけ見ると危険。水収支や流出過程も要チェック
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